同時進行レポート第1

 この顔だけ狛犬。友人彫刻師栗田氏から顔だけになった狛犬を貰った。しかしこの顔だけ狛犬。とても恐い!
「なぜ、体からこの顔を切り離した。おれは体に帰りたい!」
  と叫んでいるようにに見える。実に可愛そうだ。そこでこの狛犬をどうすれば良いのか?これはその木彫り狛犬救済計画のレポ−トである。
  三遊亭 円丈

◎レポート第2弾完結編はここ!
レポート第1弾はこの下!



レポート1

悲しく恐い顔だけ狛犬 12年11月
 平成12年11月21日、名古屋の同級生が、その1人が、経営する焼肉屋で同窓会兼円丈独演会を開いてくれた。
その同級生の1人に栗田剛氏(木彫りの彫刻家)がいて。なにかいわくありげな顔だけの狛犬をくれた。では木彫り狛犬の顔だけ、なんなんだ!これは?
それはもう30年も前のこと、栗田氏は名古屋市内のある寺の和尚から「この木彫り狛犬の顔がふざけてるから。別な顔に付け替えて欲しい!」
と奇妙な注文を受けた。そこで顔の部分だけ切り落とし。別な顔を彫り体にはめ込み、切り取った顔はそのまま30年間保管した。そして栗田氏は、私が狛犬の趣味のあることを知り、壁掛けのお面のような台を付けてくれたのだ。製作年は不明だが、江戸末期あたりの狛犬ではないだろうか?戦争で焼け、阿はすでにない。

 

悲しく恐い顔だけ狛犬 12年11月

二日後、仕事で夜、帰ってきてから取り出してこの顔だけ狛犬をジィと見た。恐い!ふざけている筈の狛犬が。とても恐い。
 この狛犬は今も元の体に帰りたがっている。しかしその体には、別な顔があり、戻れない。顔に完全に恨みを含んでいる。そこでこの狛犬に
「そうは言っても。もうお前は、元の体に戻れないんだ。だからあきらめよう!なあ、おれがなんか良いように考えるからさああ」
と説得したが全然納得しない。顔は更に恨みを募らせ、恐い。
 このままにしておけない。どうしたらこの狛犬が一番納得してくれるのだろう。せめて台を漆塗りにしてもう少し立派にして上げたい。狛犬は私の友達だ。顔だけ狛犬を救え!

 

かみさんは恐いので物置にしまった 12年11月24日

しかし次の日からこの狛犬が見あたらない。そこでかみさんに聞いたら恐いので物置にしまった。バカタレ!
 なんてことをするんだ。それから物置から出し、改めて見たがやはり恐い!そこで包装して袋に入れて室の隅に!しかしあの狛犬をなんとかして上げたい。なにが出来るのか?なんとかならないものか?

 

栗田氏との改造計画を相談 12年11月

 3日後、あの狛犬をもう少し体裁を整えて上げたいが、と電話をしらた。彫刻家の栗田氏は
「とりあえず顔の後ろをもう少し作り厚みをつけ立体的にして、下の台を今よりもう少し大きい台で漆塗りにしたら...。」と言うそこで「ではその裏にこの狛犬の由緒を刻んで欲しい!」とたのんだ。

 

狛研で会員が
  “死んだロッキーが顔だけで戻ってきた”と叫んだ
 11月

 11月28日に狛研の例会があり、会員は凄く興味を持ち、見ていた。だがみんなの意見は「それほど恐いない。いい顔だ!」と言う。そこでどうすれば良いのか?意見を求めたら
「体を作って上げなさい!それが一番喜ぶ」
体を作ったらいくら金が掛かると思ってるんだ。ホントもう全く他人事だと思って!その他には
「阿の方の顔だけを作り、1対にしたら?」
うん...まあ、これならなんとかなるかも知れない。
でも顔に厚みをつけることについては
「いあや、少し厚みをつけるんなら体をつけて上げたほうが!」
うるさい!もう金が掛かり過ぎるよ。
あと変った意見として
7月に死んだ柴犬ロッキ−が、顔だけ狛犬になって戻ってきたんだ!」
やかましい!ホントにもう。そして一致した意見は、「それにしてもその狛犬の寺の住職はひどい。よくそんなことが平気で出来るもんだ!」とその住職に非難轟々!
心を救うのが仕事なのに狛犬を苦しめて平気でいる。そんなことだから日本の在来の仏教はダメになるんだ。けしからん。と気がつくと私が一番非難してた。

 

顔だけ狛犬の夢!“俺を出してくれ〜っ!” 11月

 その夜、顔だけ狛犬の夢を見た。どうも最近なにか気になることがあると夢を見るようになった。その夢は、顔だけ狛犬がいて、やがてドンドンと暗くなり、ついに目だけ浮かび上がってキョロキョロしてる。しかしそれは恐い感じではなくユ−モラスな目玉だった。
そして朝、起きてその夢の意味は直ぐわかった。
「出してくれ!」と言うことだ。
狛犬も人に見られる方が幸せなんだ。包装して仕舞って置かないで出してくれ。そこで狛犬を出して飾った。

 

阿吽セット案浮上・・狛研三宅氏と相談したら!11月

 翌日、狛研事務局長三宅氏に電話して、どうしたら良いのか電話で相談をした。その結果 「阿の方の顔を新たに作って阿吽セットにして、これを将来的には狛研のシンボルとして長く保管してはどうだろう!」と言う結論になった。

 

“少し預かって見てみましょう”綾瀬稲荷唐松宮司! 11月

 そしてもう1人ぜひ意見を聞きたい人がいた。綾瀬稲荷の唐松宮司だ。普段とてもやさしく親切な唐松宮司だが、しかし時にズバッと本質と突く一言がある。とても勉強になる意見を言う方だ。唐松氏ならなんて言うのかと電話をして訳を話したら。
「見てみましょう。一晩預からせてください」
そして綾瀬稲荷に狛犬を持って行った。
「翌日、返事に目を新しいのしなさい」
仕事から帰ってみると唐松氏は、狛犬をうちまで届けてくれ。一通の書状が入っていた。いやあ、ホント申し訳ない。そこに書かれている内容を要約すると
「この狛犬は顔を削る時、魂を抜いたのでありません。(寺や、神社にある狛犬、仁王尊など建立する時に魂を入れ、用なしになった時抜く)」
「恐いからと言ってどこか他所にやるのはよくありません。狛犬が好きなら全ての狛犬を分け隔てなく可愛がることが大切です」
「目玉の夢は出してくれ!ではなく片方の目にヒビが入っているので目を直してくれ!と言うことです。この目の修理し、新たに楕円形の台をつけると良いでしょう!」
「元の狛犬は円丈さんが大切に家に置き、それと別に阿吽の顔だけの同じ物を1対作られると良いでしょう!」
なる程!いやあ、最もだ。さすが唐松宮司の言葉は、重みがある。

 

目玉のガラスを手に入れてくれ!..栗田氏 12月

 とりあえず今ある狛犬の修理を頼み、あとの阿吽については来年になってからの計画にしよう。そこで再び栗田氏に電話した結果、台は楕円形にして、黒の縁取りで中を金箔で塗る。そして問題は目玉の修理。そのガラスが栗田氏にいる愛知県では手に入らない。
「東京ならそう言う店もあると思う。目玉のガラスを手に入れてくれ!そうすれば同じ目に復元できる!」と言うのだ。
「目玉のガラス屋をさがして!..読売の斎藤氏へ」
読売文化センタ−の副所長さんをしてて狛研の会員でもある斎藤氏に顔の広いところで
「どっかに狛犬のガラスの目玉を作ってくれるとこを調べてもらえませんか?」
ホント虫の良い頼みごと!でも気の良い斎藤氏は「よし分った!調べてみよう!」と引き受けてくれた。いやいや、すんませんねえ。

 

飾ってたら少し性格が明るくなった!ほんまかいな 12月3日

 

 夢を見て以来、飾って置いた。そうしたら我が家の空気にも馴染んできた。飾って眺めて撫でながら励ましている内に表情が明るくなってきて。また自信もついてきたようだね。性格も明るくなった。うん、ほんと!良かった、良かった。ほんまかいな。
「ガラスの目玉を作る店発見!その名も「目玉屋」」
それから2日後、仕事から帰ってくると斎藤氏からFAX!ついに台東区に義眼などの目玉専門店が見つかった。
よしここで二組ばかりの目玉を作って!いよいよ。顔だけ狛犬の救済計画第一弾の始まりだ〜〜〜〜っ。果たしてあの悲しげな顔だけ狛犬に幸せの春は来るのだろうか?ホントに円丈は計画を実行に移すのだろうか。2001年2月には狛犬は、新しくなってるはずだ....と思う。

乞うご期待!!


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