杉山神社の狛犬
    
by 阿由葉 郁 夫
 私の狛犬巡り第一歩は地元の杉山神社だった。娘も七五三の時にお世話になったところ。
 巡り出すと、この神社名はあっちこっちにあって、何となく気になりだした。八幡神社とか諏訪神社みたいにどこにでもあるのかと思ったが、どうも我が地元だけらしい…それなら、全ての杉山神社を回ってみよう!


写真1: 緑区西八朔の杉山神社


   【 メニュ− 】
 ◎杉山神社本編
 ◎杉山神社狛犬デ-タ集
      どれを?






本家争い  

 巡り出して気になったのが、いくつかの神社で「当社こそ本家だ!元祖だ!」と饅頭屋のような主張していること。一体、どうゆうことなのか調べてみた。 杉山神社は続日本後記に承和5年の記事として記されているという。従って、千数百年の歴史!と云う事になる。そして、延喜式の神名帳に都筑群唯一の式内社として列しており、武蔵六所宮の六の宮が杉山神社と云う事らしい。
 しかし、そんな歴史と由緒のある神社なのに、長い歴史の中の一時期寂れてしまった時期でもあったのか、「本祠がどこか、祭神が何か」の定説がないという。
 そこで「此処こそが…」という本家・元祖争い(これを式内社論争と言い、江戸時代後期から続いている)が未だに決着がついていない。これがその実体のようだ。
写真 2-1:西区中央の戸部杉山神社石碑 写真2-2:緑区西八朔杉山神社石碑




 
杉山神社は何社あるのか?  
全て巡ると言っても、一体何社有るのか? その所在は、鶴見川水系中心とした地域にほぼ限られており、武蔵風土記には72社が 記されているが、さて平成の今現在、実際には何社有るのか? 地図と資料を携えて、確認できたのが43社(名前が変わった4社、他に合祀された1社、不明1社は含まず)で、これでほぼ全てと思われる。まだ他にもあるかなぁ?杉山神社全リスト参照。

杉山神社狛犬データ百科  
本家・元祖争いは私の興味外。それに、何故か本命候補とされる神社には、狛犬がいないか、いても昭和タイプ!そこでそれに対抗して、
「一番イイ狛犬がいる杉山神社を勝手にナンバーワン杉山神社を決めてしまおう!」
いうのがテーマ。以下は杉山神社の狛犬データ。

狛犬建立率 全43社中、36社にあり、狛犬建立率は83.7% 横浜・川崎市367社では72.2%だから、杉山神社はエライ!
時代別狛犬数 平成2対、昭和16対、大正7対、明治7対、江戸期3対、不明4対(4対とも江戸期と思われる)
江戸タイプ率 江戸タイプ狛犬の率は、40対中の26対で65% 横浜・川崎市の320対では52.5%だから、やっぱり杉山神社はエライ!
石工名在銘率 石工の名が刻まれているものは、40対中23対で57.5%とかなり高率 一番多い石工 杉山神社で複数対彫っている石工は3人。 二子の小俣庄右衛門が2対、烏山の足立光 一が3対。そして、何と言ってもチャンピョンは、内藤慶雲の6対!






在銘石工ベスト3

小俣庄右衛門

上恩田杉山神社
(横浜市青葉区あかね台)
大正5年 江戸くちびる玉 獅子


 この地区に良くあるタイプで必ずしも好きではないが、口中の歯と舌がよく彫 れている。(写真3-1:小俣庄右衛門)
足立光一

北新羽総鎮守杉山神社
(横浜市港北区新羽町)

昭和36年 江戸玉獅子阿吽逆

戦後も江戸タイプを彫っていた数少ない石工の一人。だが、この石工の作は一目で分かってしまう。(写真3-2:足立光一)
内藤慶雲

杉山神社(横浜市緑区青砥町)明治39年 江戸両小獅子くずし
 
征露記念 に奉納された。慶雲の中ではちょっと変わったタイプ。(写真3-3:内藤慶雲)

 

 


杉山なかなか狛犬

三度笠狛犬



 頭と耳が一体となり、三度笠をかぶっているようでもあり、マッシュルームのようでもある。 (写真4)
杉山神社-横浜市神奈川区六角橋
明治33年 江戸逆玉獅子 石工当所植松兼太郎




謎のおやじ狛犬
 どうしてこんなオヤジ顔になってしまったのか!石工は嫌がったのに、奉納者の注文で無理矢理作らされた?明治13年再興、鶴見石工飯島吉六とある。
 まさか吉六が作っ たのではあるまい!江戸はじめタイプ、1700年代後半くらいの作か?
(写真5:鶴見 区岸谷の杉山神社)


唯一のブロンズ狛犬
これを狛犬と呼んで良いのかと多少気に掛かる。翼があったらこのまま飛び立ちそう な気さえする、ちょっとユニークなブロンズ。
秀次作、台座は内藤慶雲。昭和3年御 大典記念 ブロンズ江戸尾立玉獅子阿吽逆
(写真6:横浜市都筑区池辺町の杉山神 社)



一番小さい狛犬
 拝殿横のスペースが先代置き場。狛犬だけではなく灯籠その他が沢山並んでいる。阿 吽ともにあって、それぞれオモシロイ顔をしている。
 前足が破損しているせいもあって、高さ25・と小さめ。建立年不明 先代江戸はじめ
(写真7:横浜市保土ヶ谷区西 久保町の杉山神社)

 

 

 

一番大きい狛犬
狛犬としては特別大きいわけではないが、低い位置にあることもあり、ボリューム感 と迫力はなかなかのもの。大正2年 石工生麦飯塚寅吉 高さ81cm 江戸(写真8:鶴 見区岸谷の杉山神社)



 

みかげの江戸 舌出し顔がユニーク
。横浜・川崎市では数少ないミカゲ石の江戸。大正15年 江 戸ミカゲ両小獅子(写真9:横浜市都筑区佐江戸町の杉山神社) 寂しい狛犬 鶴見川沿いからただ一社飛び離れた神社。神社自体もチョット寂しい雰囲気。狛犬の雰囲気はイイが、台座の風化が甚だしい。灯籠・水盤と同時代の作と思われるので、安政6年頃か。(写真10:神奈川県三浦郡葉山町上山口の杉山神社)




決定!
これがナンバーワン杉山神社!

 銘の刻まれた狛犬の中で杉山神社最古は、文化10年の江戸尾立!ツノ・ギボシ付き、吽はシンボルがありオス。オーソドックスな江戸尾立ではあるが、なかなかの出来。
 鋭い顔つきが決め手。私の個人的な趣味と好みで、この狛犬を杉山神社ナンバーワンに決定!

これが最優秀杉山神社だ狛犬!!

(写真A:吽 文化10年)
(写真B:阿 文化10年)


そこでナンバーワン杉山神社は
  新羽総鎮守杉山神社
(横浜市港北区新羽町)に決定!

(写真C:新羽総鎮守杉山神社全景)

 



参考文献
「杉山神社考」戸倉英太郎著・緑区郷土史研究会編(昭和53年9月)「案内記に見る都筑の名所・旧跡」相澤雅雄(朝日エコー/平成11年)



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